期待ばかりが先行する、大阪の最後の一等地北ヤード。
大阪駅周辺の開発もこれと連動して、一気に進みつつあるが、大阪の消費者だけを狙っていては、おそらく、失敗するだろう。
当初は、六本木ヒルズなどの東京のコピーのような街をつくれば、どうにかなる、高層ビルを造って、とにかくもうけるというようなコンセプトが有力だった。
果たしてそうだろうか。大阪市の非課税世帯は、全体の65%に達し、生活保護率は全国一。
そんな、街の自力だけでは、北ヤードを消費するのは難しい。
まして、大丸、阪神、阪急の増床、三越の進出と、大丈夫か?と思うほど、商業店舗の拡大が進んで、オーバーストアは確実。
到底、景気減退のなか、全国の中でも、失業率トップグループの大阪府民にこの一等地を支える経済力はないに等しいといえる。
まして、大阪府は、すでに財政再建団体に転落していることが明らかになっており、本当に北ヤードの開発はできるのだろうかと心配になってくる。
消費と開発とがタイムラグなくマッチングすることが大事で、さらに、消費を拡大するには、観光客や周辺からの消費者の流入が必要で、それだけ魅力的な街づくりが絶対条件だが、
どうも、そんな魅力ある街ができるとは、予想できない、商売根性丸出しのプランになっているのではないかと危惧している。
大阪市の大事な役割は、北ヤードという点にこだわるのではなく、キタという街の有機的なコンセプトの再構築をするトータルプランを提示することではないかと思うのです。
関西経済界も期待感ばかりでなく、汗を流さないと、ヨドバシカメラ進出に象徴されるように世界のトレンドを見極めた東京資本にやられてしまうということを肝に銘じてほしい。
大阪市は、もう一銭のカネも出せませんから、古きよき大阪の民力にこそ、大阪再生の鍵があることを信じてほしいと思います。
【TOKYOの時代】(終)アジアの首都へ変身 大阪「梅田北ヤード」
2008.1.5 08:15
このニュースのトピックス:TOKYOの時代
日本最後の一等地
関西の玄関口、JR大阪駅の北側に約24ヘクタールの広大な敷地が存在している。「梅田北ヤード」(大阪市北区)とよばれる梅田貨物駅跡地エリアは“日本最後の一等地”とも言われる。
関西系企業の本社東京移転など東京一極集中で関西地区の実質GDP(国内総生産)シェアは16%(2002年度)とピーク時の19%台を割り、減少傾向にある。このため関西経済界は、第2滑走路が開通し、24時間空港となった関西国際空港から中国などへ最短時間で行ける地の利を生かし、大阪を“アジアの首都”にしようという計画を進めている。
その拠点となる梅田北ヤード1期先行開発区域(約7ヘクタール)のコンペに日本を代表する企業4グループが応募。三菱地所やオリックス不動産など12社で構成する事業者連合が国鉄跡地入札価格で最高の3・3平方メートル当たり4000万円超で取得した。
昨年末に大阪市との協議がまとまり、高さ180メートルの超高層ビル4棟で延べ床面積48万平方メートルという巨大な再開発計画案が決定。今秋にも建設開始され、2011年春に街開きの予定だ。
“アジアの首都”となるため、関西経済連合会や大阪大学および、大阪市などの産学官によるまちづくりの基本方針では、大学や企業の研究室などを集めて先端技術の開発拠点「ナレッジ・キャピタル」(知的創造拠点)を中核にする未来型都市を志向することにした。
すでに大阪大学、松下電器産業など35件の入居希望者が登録。1月にも米カーネギーメロン大や上海・復旦大が大阪市内に進出。将来、同地区進出を希望している。
景観・環境に配慮
また、大阪の都心部には緑地が少ないことから関経連の下妻博会長は「ニューヨークのセントラルパークのようなものはできないか」と提案。これに対し、12社連合の1社でもある積水ハウスの和田勇社長は「緑地化は金を生み出さない。金を生み出さない再開発はあり得ない」と反論しながらも「緑地化の理念を取り入れ、街づくりを行う準備はある」と理解を示した。
事業者連合が緑地を増やすことに譲歩したことで、大阪市は敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示す「容積率」を3割増の最高1600%に引き上げることを認めた。
これにより、高さ約180メートルの超高層ビル4棟が並ぶが、約1ヘクタールの駅前広場に加えて、ビルの屋上庭園や歩道部分の並木など、敷地の半分以上が緑地や空間となる。幅40メートルの道路も半分以上の22メートルが歩道になり、イチョウやケヤキの並木となる。
経済界や大阪市がまちづくりにこだわるのは、同じJR貨物駅跡地の汐留(東京都港区)が無秩序に巨大ビルが林立する乱開発に終わった教訓からだ。
「景観や周辺環境に配慮したまちづくりを実現したい」と大阪市都市計画審議会会長の村橋正武・立命館大学教授は東京にはない再開発モデルを訴える。
一方、梅田周辺ではJR西日本が総額1700億円を投じ、JR大阪駅改良と新北ビル建設など大型工事を推進。阪急阪神ホールディングスの角和夫社長は「回遊性の高いまちづくりをすすめるべきだ」と阪急百貨店が入居する新梅田阪急ビルを建設中だが、再開発ビル同士を空中で直接接続する歩行デッキを設置して連携させる意向だ。
それぞれの再開発の連携による「大梅田地区」形成で関西だけでなく“アジアの首都”として中国や韓国などからの集客力強化を目指す。(真岸克治)
関空の貨物増加/鉄道網も充実
空の玄関口である関西国際空港(大阪府泉佐野市)の第2滑走路(長さ4000メートル)が昨年8月にオープンし、国内初の完全24時間空港が誕生した。梅田北ヤード再開発計画が完成するころにはJRの新駅も設置され、特急で約40分の距離で、乗り継ぎ時間を除けば、上海に2時間半、北京へも4時間以内と首都圏から最大1時間20分早く着ける。
それだけでなく、航空貨物拡大に向けて期待が高まっている。「関西には大きなビジネスチャンスがある」とは昨年6月、国内最大の貨物輸送施設を関空に建設した世界最大級物流グループ、DHLジャパンのギュンター・ツォーン社長。
中国向けを中心に貨物需要が増大しているためだ。関空からは現在、中国各地へ旅客、貨物合わせて国内最大の週324便が就航している。昨夏に比べて19便増加、特に貨物便は87便から107便へと大幅に増えている。国際貨物量も昨年11月まで6カ月連続で増えている。
関西の鉄道網は今年さらに充実する。大阪府東大阪市を縦断する初の路線、JRおおさか東線が春に一部開業する。また、鉄道空白地帯だった大阪・中之島には、京阪電気鉄道などが秋に中之島線を開業させる。来春には近畿日本鉄道と阪神電気鉄道が難波で直結する阪神なんば線(西九条-近鉄難波)も開通する。
おおさか東線は大阪東部を縦断し、今春の開業から1日142本の列車を運行する予定で、関西、片町両路線との相互乗り入れ列車が入る見込みだ。奈良方面から大阪・梅田に行く場合、天王寺で乗り換える手間が省け、大幅な時間短縮になる。
「天下の台所」大阪の象徴だった中之島を横断する中之島線も関西経済活性化の新たなステージを切り開きそうだ。中之島線は京阪天満橋駅から新設の中之島駅までを結ぶ約3キロの路線。京都、中之島という、関西の歴史ある2地域が直結する。
中之島のオフィスビルのほか大阪市立東洋陶磁美術館や国立国際美術館、大阪国際会議場など公共施設へのアクセスが飛躍的に向上する。
「新たなオフィス街ができ大阪の東西を貫く『横の御堂筋』になる」(京阪電鉄)と期待されている。
◇設備投資が旺盛 関西経済、今年も順調
今年の関西経済は、大企業の設備投資や輸出の好調さに支えられ、緩やかながら拡大が続く見通しだ。
三菱東京UFJ銀行経済調査室の木田祥太郎氏は「米国景気の影響を受け、今年前半は減速するものの後半は持ち直すだろう」と話す。同行予測の2008年度の関西の実質経済成長率は1・9%。全国平均を0・1ポイント上回り、07年度に比べ0・4ポイント改善する見通しだ。日本総合研究所は、07年度の1・4%から08年度は2・1%と2%台回復を見込む。
成長の最大の要因は、旺盛な設備投資だ。木田氏は、シャープが堺市に建設中の液晶工場など、大企業中心に付加価値の高い戦略的な投資が当面続き、先行きも明るいとする。
昨年末から大阪、尼崎西宮芦屋、神戸の3港が1つの港として扱われ、入港料負担などが軽くなったこともプラスだ。今年2月には新名神高速道路が開通。東海地方とのアクセス向上で沿線に工場が進出すれば、投資の押し上げ効果が期待できると指摘している。