森永卓郎氏が「子ども手当」に疑義。


天下の愚作、財務省の回し者政策である「子ども手当」に非難の声が日増しに高まっている。

悪名高き、配偶者控除、扶養者控除の撤廃に疑義を唱えたのがテレビでおなじみの森永卓郎氏。

さて、課税最低限が先進国で一番厳しくなる政策が、本当に低所得者にやさしい政策かどうか、よく考えないといけない。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20090810/173658/?P=1

以下 SAFETY JAPANより

民主党の子ども手当がもたらすプラスとマイナス

経済アナリスト 森永卓郎
2009年 8月11日

 総選挙を3週間後に控えて、各党のマニフェストに対する評価がメディアで話題になっている。

 民主党の施策の目玉の一つとなっているのは子ども手当だ。中学校卒業まで、すべての子どもに月額2万6000円(初年度は1万3000円)を支給するという。

 この子ども手当の財源の一部は、扶養控除の一部廃止と配偶者控除の廃止でまかなわれることになっている。扶養控除のうち、老親等の扶養控除や地方税分は残すということなので、国税の子どもに対する扶養控除38万円と配偶者控除の38万円を廃止するということになる。

 子育てが家計の大きな負担になっている現状を考えれば、子ども手当という政策自体は評価すべきだろう。少子化を防ぐためにも一定の効果を持つはずだ。だが、財源の調達のしかたについては問題があるように思える。

 民主党の主張によれば、控除を廃止して手当にすることは低所得者に対して配慮したものだという。なぜなら、手当は金額が一律なのに対して、扶養控除や配偶者控除のような所得控除は、高所得者ほど有利になるからだ。

 例えば、同じように38万円の扶養控除が適用された場合でも、高所得者の減税額が10万円以上にもなりうるのに対して、低所得者の減税額は2万円にも満たないことがあるからだ。つまり、扶養控除を廃止して子ども手当を導入すると、低所得層ほど有利になるのである。それはそれでいい。

 ただ、そこには2つの大きな問題点がある。

控除の廃止によって課税最低限が世界最低レベルに

 1つは、課税最低限の問題である。課税最低限というのは、所得税を支払う義務が生じる年収のことだ。わかりやすくいえば、「これ以上の金を稼ぐと所得税を納めなくてはなりませんよ」という最低限度額のことである。つまり、この課税最低限が低ければ低いほど、低所得者に厳しい税制ということになる。

 財務省のホームページによると、夫婦と子ども2人という標準世帯の課税最低限は、今年1月時点で、フランス490万円、英国410万円、米国378万円、日本325万円、ドイツ289万円となっている。日本は先進国のなかで、ドイツに次いで低所得者に厳しい税制を採用していることになる。

 ところが、もし民主党の主張する配偶者控除と扶養控除の廃止をした場合、標準世帯では配偶者控除38万円+扶養控除(子ども2人分)76万円=114万円が、ここから引かれることになる。結局、日本の課税最低限は211万円となってドイツを大きく下回り、先進国のなかで最低ラインを独走することになってしまうのだ。

 果たしてそれはよいことなのだろうか。もちろん、海外の税制に無理に合わせる必要はないが、あまりに低所得者から税金をとるということには大きな問題があると思う。ただでさえ低い課税最低限を、さらに下げる正当性がどこにあるのか。民主党はきちんと考えていないのではないか。

 もちろん、課税最低限が下がっても中学校卒業までの子どものいる世帯は、子ども手当をもらえるので、世帯の手取り収入は増える。子ども手当の創設と控除の廃止を合わせた効果で、中学生以下の子どもが2人いる世帯では、手取り年収は、年収600万円世帯ではプラス45.4万円、年収500万円世帯ではプラス48.7万円、年収300万円世帯ではプラス51.1万円と、所得の低い世帯ほど増収額が大きくなる。

 だが、それはあくまでも、中学生以下の子どもがいる場合だ。それ以外の世帯はどうなるのか。そこでもう1つの大きな問題が出てくる。

配偶者控除廃止と子育て費用は次元が別の問題

 もう一つの問題とは、配偶者控除廃止の影響である。扶養控除の一部廃止と配偶者控除の廃止があっても、単身世帯と子どものいない共働き世帯には所得税の増税はない。また、子どものいる世帯は、子ども手当によって前述のように税負担が軽くなる。

 結局、税負担が重くなるのは、中学生以下の子どものいない65歳未満の専業主婦(夫)世帯のうち、納税をしている世帯ということになる。具体的には、民主党の推計によると、年収437万円の平均的収入の世帯で、年間1万9000円の負担増になるという。

 つまり、民主党の税制改正は、子どもがいない、あるいは子どもが中学校を卒業したあとの専業主婦(夫)世帯を狙い撃ちしていることになる。

 さて、ここで専業主婦(夫)世帯(多くは女性が家にいる専業主婦世帯だが)に対する評価が問題になってくる。わたし個人の意見としては、女性が家にこもっているよりも、事情が許す限り共稼ぎをしたほうがいいと思っている。実際にはたいした稼ぎにならなくても、社会との接点を持ったほうがいいからだ。

 だが、それはあくまでも各家庭内の問題である。所得を家計のなかでどう分担して稼ぐかは、その家庭の稼ぎ方戦略によるのではないか。非常に稼げる夫がいて、その妻が専業主婦をやっていたり、逆に非常に稼げる妻がいて、そこに専業主夫がいたりする家庭もあるだろうが、それもその家庭の「内政」の話であって政府が介入すべき問題ではない。

 子どもに対する手当なのに、共稼ぎ世帯は子どもがいなくても増税にはならない。一方で、専業主婦世帯は、これまで何人子どもを育てていても配偶者控除廃止のために増税になる。ちょっと筋が違うのではないか。

 確かに、子ども手当と扶養控除との兼ね合いのなかで、低所得者優遇という税制にするのは悪くない。だが、配偶者控除を廃止するかどうかは、子育て費用の問題とは関係がないではないか。それでも、あえて民主党は配偶者控除廃止という決断をしたのはなぜか。

配偶者控除廃止はターゲットを間違えている

 民主党が専業主婦世帯を狙い撃ちした理由は、おおよそ見当がつく。明確な理由はマニフェストには書かれていないが、「専業主婦世帯は贅沢だから、増税しても構わないだろう」という判断があったに違いない。

 だが、本当に民主党の考えるように、専業主婦世帯は金持ちなのだろうか。それは大きな誤解である。

 大金持ちの奥さんが専業主婦をやっているという例はほとんどない。なぜなら、大金持ちは自分の会社を持っていて、妻を会社の役員にしているケースが大半だからだ。会社役員だから、税制上は専業主婦ではない。実際、わたしは大金持ちを何人も知っているが、少なくとも奥さんが税制上で専業主婦をやっているという話は聞いたことがない。つまり、もとから配偶者控除など受けてはいないのだから、配偶者控除をなくしても痛くもかゆくもないのだ。

 では実際に、子どもがいないか、あるいは子どもが中学生以上になっても専業主婦をしているのはどういう人か。例えば、親の介護のために仕事をしかたなく辞めて、家にいなくてはならないという人である。あるいは、兄弟や子どもに障害があったり、いろいろな事情を抱えたりして、やむにやまれず専業主婦をしているケースも多いだろう。今のような時代には、生活に余裕があって専業主婦をしているという人はむしろ少ないのである。こうした人たちは、配偶者控除がなくなったら痛い。

 だから、民主党の考える「専業主婦世帯金持ち論」というのは、わたしは考え直したほうがいいと思う。そんな人はごく少数派なのである。民主党はもう少し丁寧に税制を詰めるべきではないか。

森永卓郎(もりながたくろう)

森永 卓郎1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発総合研究所、三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)を経て2007年4月独立。獨協大学経済学部教授。テレビ朝日「スーパーモーニング」コメンテーターのほか、テレビ、雑誌などで活躍。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。そのほかに金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。

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2件のコメント

カテゴリー: ニュースと政治

森永卓郎氏が「子ども手当」に疑義。」への2件のフィードバック

  1. 正恵

    うちはこども3人で、上の子が一昨年就職して扶養家族から抜けました。そしたら所得税と住民税が馬鹿みたく上がりました。1人抜けただけであれだけの増税では、控除そのものが無くなったらどんだけの増税になるか・・・下の2人は現在高校2年と3年ですから、こども手当の恩恵は一切受けませんし、万が一高校無料が実現しても1年間しか恩恵は受けられないし、住民税が1万5千円上がったら相殺されてしまいます。子どもが同級生の家庭では、ウチと似たりよったりです。なにが「負担増になるのは4%」なもんか!!民主党って本当に馬鹿。

  2. 義隆

    そうですね。控除の廃止で、どんな影響が家計にあるのかわかりません。税金だけでなく、所得や税金を基準にした社会保険料や保育料が上がらないか心配です。

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